しのぶはどれだけ声をかけても、体をゆすってみても起きなかった。
きっとショックで死んでしまったんだろう。

「仕方ないから、これを教室の奥に運んでよ」
椎名に言われて直樹と英明のふたりでしのぶの死体を教室後方へと移動した。
「ついに脱落者が出たな」

勝ち誇ったように言ったのは重人だった。
重人はメガネの奥の目を鋭く光らせている。
「うん。そうだね」

私も同じ気持ちだった。
椎名の友達になるためなら生死だってかける覚悟でいる。

こうして死者が出るのだって、想定内の出来事だった。
「みんな疲れたでしょう? 少し休憩しようか」
しのぶが死んだことをきっかけにして、椎名がまた麦茶を振る舞ってくれた。