直樹が英明の腕を振りほどいて、今度は逃げる立場に変わった。
できるだけ英明と距離を取り、動向を伺う。
「うぅ……」

小さなうめき声が聞こえてきて振り向くと、教室の隅っこで春美がうずくまって震えていた。
土気色をした顔で膝を立てて座り、両手で自分の足をギュッと抱きしめている。

そんなことをしていたらすぐに逃げることができないのに。
そう思ったが助言することはなかった。
春美だって、今は私のライバルなんだから。

春美のことを気にしている間に英明がしのぶを追い詰めていた。
後に壁、前には英明という状況に追い込まれたしのぶが真っ青になっている。

「や、やめて!!」
英明がビンの中身をしのぶへぶちまける。