千佳が鼻を鳴らしてそっぽを向く。
だけどそんな風に突き放されてもなにも感じなかった。
すべては椎名と友達になるためだ。

千佳とも友達だけれど、二の次になるのは仕方のないことだった。
「それじゃ、そろそろ次のテストをしましょうか」

椎名がパンパンと手を叩いて、その場の雰囲気を変える。
それでも重人勝ち誇った笑顔は消えなくて、目の端にチラチラ映るだけでイラついた。

「せっかくみんなが薬品を持ってきてくれたから、これを使いましょう」
椎名の視線が教卓の上に並んだ7つのビンへ向けられる。

ラベルを自分の見やすい向きに変えて、何かを思案しはじめた。
「ヒ素はさすがにダメね、毒性が強すぎる。エタノールじゃ面白くない……」

ぶつぶつと呟いて椎名のお眼鏡にかからなかった薬品たちは教卓の隅へと押しやられていく。
なにをするつもりだろうかと見守っていると、椎名が手にとったのは臭素酸カリウムだった。