私がもってきた塩酸はそれほど悪くなかったようだけれど、重人の番狂わせによってわからなくなってきた。

これは実質、私としのぶの最下位争いになってしまったのだ。
背中にジワリと汗が滲んできて緊張から呼吸が浅くなるのを感じる。

「じゃあ最後はしのぶ、なにを持ってきてくれたの?」
椎名に促されてしのぶは渋々ながら口を開く。

「あたしが持ってきたのは……エタノール」
しのぶがそう言った瞬間全身から力が抜け落ちていくようだった。

エタノール。
ただの消毒液だ。

もちろん口に入れるものじゃないけれど、その毒性はこの中では一番弱いはずだ。
その証拠にエタノールと聞いた瞬間椎名が残念そうな顔を浮かべた。