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それから20分待ってようやく重人が教室へ戻ってきた。
「おい、遅いぞ」
と、英明が文句を言う。

英明は2番めに化学室へ行っているから、その分余裕もあって待ち時間が長く感じたんだろう。
一方の重人はどの薬品を持って帰るべきか悩んで遅くなったことは明白だった。

どれだけ悩んでみても、しょせんは知れているのに。
「おまたせ」

だけど教室に入ってきた重人の表情には自信が満ちていた。
堂々とした足取りで教卓へ向かい、袋と割り箸を置く。

「なんだか自信がありそうね?」
椎名にそう言われたときに重人は大きく頷いて見せた。
椎名へ嘘をつくことはないだろうから、本当に自信があるみたいだ。

でも、どうしてだろう。
「ふん。ただのハッタリだろ」