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その日はあっという間に放課後になっていた。
それは明らかに椎名の存在があったからだった。

先生に当てられた椎名がその場で英文を読み上げていたとき、彼女がトイレに立って廊下を歩いている時。
そのすべてがなんとなく非日常感で溢れていて、常にドキドキしていたからだ。

きっと、2年A組のクラスの子たちはみんな同じようなことを感じていただろう。
「はぁ……明日も椎名さんに会えるなんて、夢みたいぃ」

千佳が自分の頬を両手で包み込んでため息を吐き出す。
「まるで恋してるみたいだよ?」

呆れて指摘すると千佳は笑って「それでもいい」と答えた。

初めて会った女の子に恋するなんて、単純さに呆れながら廊下を歩いていると「お先」と、声がして崎間直樹が私肩をポンッと叩いて追い越していった。

「あ、う、うん」