彼も私に気がついて、クシュッと顔を歪めるようにして笑ってくれた。
満面の笑みに私の胸がキュンッと音を立てる。

女の子みたいに可愛らしい彼は自分の可愛さを理解していると思う。
ちょっと小首をかしげて微笑むと、それが相手にどううつるのか。

その計算づくしの可愛さにまんまと心を鷲掴みにされてしまう。
彼の笑顔に胸を打たれて数秒立ち止まっていたら、後ろから来た生徒にぶつかられてしまった。

咄嗟に「ごめんなさい」と謝って振り向くと、そこに立っていたのは彼女だった。
ツンッと鼻を刺激するほどの甘い香水の匂いに一気に気分が悪くなる。

思わず顔をしかめてしまうと、彼女は邪魔そうな顔で私を見る。
私は条件反射のように視線をそらし、彼女に道を譲った。

心臓がドクドクと早鐘を打つ。
イヤな汗が背中にダラダラと流れていく。