そんなこんなで結局その翌日、レオンは話をした通りマルコフ手紙を書いた。
 もちろん内容は私とレオンの関係を伝えるもので、今後キールが本気で私に婚約を申し込むなんていう最悪なシチュエーションになった場合に備えての対策だ。

 本当に婚約をするつもりはないから形だけなんだけど、それでもマルコフは大はしゃぎ。
 むしろ婚約そして結婚への話を進めようと躍起だ。
 由緒正しい侯爵家。さらにお金の心配もないレオンは、マルコフの金銭的援助を必要とはしない。
 それを理解しているマルコフは、商人という人脈を駆使し、世にも珍しいものをレオンに送りつけ出した。

 それに飽き足らず、私に投資も始めた。
 投資内容は見た目をゴージャスでエレガントに着飾らせ、レオンから飽きられないようにする作戦らしい。
 マルコフに買ってもらうドレスや宝石は、以前の自分なら遠慮していたけど、今回はありがたく受け取っている。

 以前は施しを受けてしまえば未来の旦那様を否応無しに受け入れないといけない強迫観念があったけど、今はレオンという相手がいる。
 ゆくゆくは別れる間柄で、本当に婚約する気もないとはいえ、そこは上手く別れる理由をつければなんとかなる。
 マリーゴールドが現れた時に私の身の振り方、別れ方を悲惨なものにしないで済むわけだし。そこも話し合いでレオンなら理解してくれると思うし。