「男爵は敏腕の商人でいらっしゃる故、情報通とも聞き入っています。でしたら、今回の事もお父上の耳に届いているのではありませんか?」
「……おっしゃる通りです」
「であれば、トリニダード男爵があなたとコーデリア公爵との縁を結ぼうと考えるのが妥当かと思うのですが、違いますか?」

 イケメンで察しの良い男……最高!
 惚れてまうじゃないか……こういう言いくるめようとしているシチュじゃなかったらの話だけど。

「だからこそリーチェ嬢は私の元へと助けを求めに来たのだと考えていたのですが……どうやら私が見当違いな当て推量をしていたのでしょうか」

 そう言った後、レオンは残ったワインを飲みほした。
 いつも通りのクールな顔をしているけれど、私には分かる。
 彼は推し測って言ったわけではなく、確信を持って発言したのだということを。
 クールな表情の中にもいつも以上に余裕さを感じる雰囲気に、私はそう感じた。

「私の負けのようですね。レオン様のおっしゃる通り、父は私がこれを機に公爵家と婚姻を結べるようになればいいと考えていると思います。そして問題なのは、それをコーデリア公爵様も理解しているということです」

 ため息つきそうになるのを堪え、一息にそう言った。するとレオンの凛々しい眉がピクリと小さな反応を示した。

「あの男がリーチェに、婚約を申し込むつもりでいると言うのか……?」

 レオンの背後からズオオッと不穏な邪気が流れ出ているように見えて、私の背すじは震えた。
 ……ってか、敬語はどこにいったの?