「語弊がある言い方をして、申し訳ございません。侯爵様に抱きつかれると……というよりも、いかなる男性に抱きつかれてもこの体は反応し鼻血を出してしまうでしょう」

 あれ? なんだかこの言い方は、もっと語弊があるのでは?
 これではまるで私が、遊び人のように聞こえる。
 レオンもそう思ったのか、絵画に出てくる神のような整った顔に、曇りが見えた。

「……と言いますのも、私は男性に免疫がありませんので……誰が相手でもこうなるという意味です」
「……なるほど。そうか」

 レオンの強固な表情がさらに堅くなったような気がした。そんな読めない表情をしながらも、レオンは服の袖で、私の頬を拭う。
 どうやらそこにも血がついていたらしい。

 レオンは設定上よりも私に優しい。
 新しいおもちゃを見つけた子供のように思えなくもないけど、そもそもレオンは自分が興味を持った相手以外に心を許さない。
 そしてその許容範囲はミジンコほどの大きさだ。だからこそどの令嬢にも冷たく、同姓に関してもあまり心を許さない。マリーゴールドに出会うまでは。