そんな風に考えていると、レオンの薄い唇が弧を描いた。

「いいや、計算高い女性は嫌いじゃない」
「ひぃぇ……っ!」

 こらえきれず声が漏れ出てしまった。それもそのはず。
 レオンとの至近距離も心臓にかなりの負担を強いられているというのに、解放してくれない私の手のひらにレオンがキスをしたからだ。
 この間は手の甲にキスするフリをしただけだったのに、今回はあの形の良い唇が間違いなく触れた。ガッツリ触れた。しかも手の甲ではなく、手のひらにだ。
 それにより間違いなく私の二機目の命は爆発し、朽ちた。

「こっ、侯爵様! 先ほどから距離が近いように思うのですがっ⁉」

 ってかレオン、マジでキャラ崩壊してない? これじゃあただのチャラいヤツじゃん。
 ってかそれ、キールじゃん。チャラい男はキールひとりで十分だ。
 私の理想の男は硬派でいて欲しい。

「何を言う。先日はリーチェ嬢の方から距離を詰めてきたではないか。私が同じことをするのはだめなのか?」
「距離を詰める? 私が?」
「ああ。俺から香りがすると言って、近づいて来たと思うが?」

 前回レオンと会った時のことを思い出す。
 距離を詰めたのは確か、香水をつけてないって言うレオンから良い香りがしたから、それを確かめる為に……。
 ってかあれ、今思うと香水というより、レオンの体臭だったのかな?