ただし私は、結婚する気がないわけじゃないんだけど。

「結婚は人並みに興味があります。ですが、父に勧められて結婚することを望んでいません。たとえそれが貴族社会の習わしだと分かっていても、私が選んだ人と結婚できないのであればそれを受け入れたくないと考えています」

 果たしてレオンは理解してくれるのだろうか? こんなにも現代的な思考をしている私の意見を。
 この世界での一般的と呼べる考え方とは違う事は、私が一番よく理解している。

「なるほど。だから資金調達をしようとしているのか。父親から流れてくるお金ではその理想を追い求めることはできないから」
「その通りです」

 本当に察しがいいな。会話がスムーズに進むおかげでノーストレスだ。

「だが、トリニダード男爵が本気になれば、リーチェ嬢のビジネスなど簡単に潰されてしまうのではないか?」
「ですから、侯爵様と手を組んだのです。ビジネスパートナーがかのバービリオン侯爵閣下だと分かれば、父も手は出せないかと思いまして」
「そうか、では俺はまんまとリーチェ嬢の手駒にされていたわけだ」
「……気分を害されてしまいましたか?」

 今更ながら契約条件が見合わないとか言うかな?
 元々私にとって好条件の契約内容なんだけど、やっぱり後悔とかしちゃった?
 もしくは怒ったかな? せっかく紳士的に条件良くしてくれたのに、なんてしたたかな令嬢だとか思って……?