「いえ、そういうわけではありませんが……ビジネスでは私と侯爵様は公平な立場にいるはずです。ですので、万が一という不安は先に取り除いていたいという気持ちからの言葉でした。不快な思いをさせてしまった事は謝罪いたします」

 動揺してるの、バレたかな……? なるべく毅然たる態度で言ったつもりだけど。
 ってかそんなに睨まなくてもよくない? そりゃ、レオンが言うように、ただ香水を持っておきたい、今度そういう令嬢に出会った際の保険だ。

 ……なんて理由が本当なんだったら、こんなにも疑われるのは不快かな? と理解できなくもないけど。
 でもレオン、あなたはそういうタイプじゃないって事は、この私(作者)が一番よく知っているのだから。

「それでは逆に、こちらから質問してもいいか?」
「……はい?」

 レオンはスッと立ち上がり、コーヒーテーブルを挟んだ向かい側に座る私のそばに来て、私の隣にドサッと腰を下ろした。

 ……なぜ、隣に座る?
 しかも距離が近いんですけど?

 突拍子のないレオンの行動に、私はすかさずそっと、鼻に手を当てた。鼻血が出てしまわないか心配になったせいだ。
 足を組み、その組んだ膝の上にたて肘をついて顎をのせる。ほんの少し傾げた首からのぞく首筋が、やたらセクシーで心臓の音が高鳴る。
 サラリとした黒髪。小首をかしげたことで目にかかり、その隙間から覗く青い瞳が私を見つめているせいで……私に、心臓発作にて死亡するフラグが立ちました!