私がゴクリと喉を鳴らしたと同時に、レオンは香水瓶の蓋を開けた。
 そしてさっきとは違い、香水を宙には振りかけず自分にシュッシュと二振り。

「どうだ? 何か違いを感じたりするか?」

 えっ、私に聞くの? いや、いいけど。手っ取り早く試してみたい気持ちも分かるけど。

「そうですね。正直私には特段違いは感じられませんね」
「……そうか」

 ……なんかめちゃくちゃ落ち込んでるじゃん。媚薬効果の期待値、高すぎない?
 そもそもレオンはそんな香水つけなくとも、私からすれば見目麗しく妖艶な男なので、香水の効果云々ではないのだけど。
 だからこの媚薬を使う前と使った後に違いを感じるか、なんて聞かれると違いは感じない。

 じゃあ俺に惚れそうになるか? と聞かれれば、惚れる。というか、むしろすでに惚れている。
 なぜなら私の理想と好みを詰め込んだ存在だから。……ただしその場合も、香水の有無は関係ないけど。

「レオン候爵様、一体誰にそれを使いたいのですか? そろそろ本当の事を教えてくださってもいい頃合いかと思いますが?」
「いや、先日伝えたように、これは今後の為の保険であり、誰か特定の相手に使いたいという意味ではない」

 嘘つけ。

「神に誓って、決して誰にも口外はいたしません。ビジネスパートナーである私を信じては下さらないのですか?」

 共にビジネスをやっていこうという仲な訳だし、お互いの信頼は大事だと思う。
 だから情に訴えかけるようにほんのり視線を落とし、シュンとした態度を見せつけた。