「リーチェよ。私は本当にお前が誇らしい」

 ガハガハと笑うマルコフは、何やら上機嫌だ。
 私宛の手紙? しかも差出人は貴族から? どこの貴族だろう?
 社交界に顔を出すようになってから会話した貴族の顔を思い出す。マルコフの様子から見るに、家紋はそれなりに良いみたいね。
 手紙を受け取ろうと手を伸ばした時、私の背中にヒヤリとした冷気が走った。

「パパ、それは……!」
「そうだ、コーデリア公爵からの手紙だ。バービリオン候爵の事といい、コーデリア公爵までとは。我が娘ながら隅に置けんなぁ、ガハハッ!」

 キールからの手紙……なんでキールが手紙を⁉ そんな疑問も、今は端に押しやり、手紙を受け取るよりも先に、この愚かな考えを否定するのが先決だ。

「ちっ、違います!」

私は立ち上がって抗議しようとしたが、マルコフはすでに何か悪巧みでも考えてそうな顔を向けている。

「照れなくても良い。この手紙はコーデリア公爵家の第一騎士団の騎士が、直々に持って参ったものだぞ。それほど丁寧な扱いを受けた手紙をいただいたのだ。まるで公爵の気持ちが透けて見えるようではないか」

 あたり前だけど、そんな色恋の話で彼が手紙を送ってきたわけではない。