彼の先見の明?
 香水事業が発展する見込みが大きいから、一口噛んでおきたいって事?
 いいや、それはない。香水自体はこの世界にごまんとある。
 ただ私はそんな香水ではなく、アロマに特化して芳香療法を行っていきたいのと、もっと個人に合わせて、その人だけの特別な香りを作りたいから、そこが他とは違う。その分価格も高く設定していくつもりだ。
 ここはレオンと意見が一致したところね。

 でもその話は契約を結ぶ時に話しただけだから、ビジネスパートナーを希望した時は知らなかったはずだし。
 そもそもバービリオン侯爵家も資産家だ。歴代の侯爵からレオンまで皆頭が切れるから、ビジネスのやりくりも上手い。
 その上レオンは皇帝一と言われるほどの騎士。皇帝からの寵愛や信頼と共に、遠征で得た報酬もかなりのものだ。
 そこまで考えた時に、ふとある疑問が頭を過った。

「はっ、もしかして……」

 レオンってば、マリーゴールド以外に好きな女性ができたって事?
 いや、催淫効果のある香水を欲しがっている地点で、その気はあるんだけど。でもまさかレオンに限ってっていう考えが私をその答えへと導かなかった。
 今後のためにとか言ってたけど、レオンに限ってそれはない。そんなものを必要とするキャラじゃない。
 ならどういう事? マリーゴールドに出会う前に、気になる人がいるの? 私が知らない裏設定ってやつ?
 いやいや、あの堅物にそんな気はなかったはずだけど……。