「怪我はないか?」

 耳元で囁くように問いかけられる、低い声。烏の濡れ羽色をしたツヤのある黒髪。
 顔を上げるとすぐそばには澄んだ湖のように思慮深く、聡明そうな青い瞳が私を映し出している。

 ……ああ、そうだ。レオンの登場シーンでは私、やたらとキラキラ系のトーンをバックに貼ってたっけ……。
 目が開けられないくらい、レオンの周りにはおびただしいほどのキラメク光が放たれている。
 しかもキールとは違った、甘いのに清潔感を感じるような香りがまた、私の心臓をくすぐってくれる。

 キールはクズ男なだけあって、容姿を良く見せるのに力を注いだ。
 そもそも自分が作り出したキャラには愛情をバンバン注ぐため、余計に彼の見た目にはこだわった。
 けれどレオンはそれ以上に力を注いだ相手でもある。なにせ男主人公。かっこよくてなんぼだ。悪役に負ける容姿では問題外。
 それだけにレオンはキールより少しずつ上乗せする形で、自分の好みをこれでもかと注ぎまくった男。
 チャラくなく硬派でツンデレな感じが、キールとは違って中身までもが私のドストライクを突いている。

「……頑張って描いてよかった」

 思わず見惚れてしまうほどのイケメンを堪能するかのごとく、私はレオンに釘付けだ。
 だからこそ、思わず言葉が漏れ出ていたことにもすぐには気づかなかった。