「クレイマス嬢の言う通りです。一緒に行きましょう」

 声の感じから、なんとなくレオンが嬉しそうに言ったように感じるが、その考えはすぐさま意識の外に飛ばした。
 天使とイケメンに挟まれているというのに、心がギスギスするのは勿体無い。今日からマインドトレーニングをする必要がありそうだ。
 以前はレオンのイラストを描きまくって、美形の顔に慣れるように頑張ったけど、今度はそのイラストにマリーゴールドを追加しよう。二人が見つめ合い、頬を赤らめ、抱きしめ合っている様子やその上……ああ、なんということでしょう。想像しただけで地獄じゃないか。今一瞬、血の池地獄や針の山が見えた気がする。
 ……だけどやるしかない。そんな風に私が意思を固めようとしていた時だった。

「ところで……媚薬香水って、なんなのですか?」

 思わずビクリと肩が跳ねた。
 純粋無垢な瞳で媚薬なんて言葉を口にされると、なんとも破廉恥なものを作ってしまったという良心の呵責に苛まれそうになる。
 いいや、決してこれはそういった類のものではないのだけど。自分を強く持つのよ、リーチェ。そもそもこれは、ゆくゆく販売するアイテムでもあるのだから。
 私はふぅ、と息をついてからマリーゴールドに微笑みを向けた。

「媚薬香水とは意中の相手を惹きつけるためのーー」
「ゴホッ! ゴホンッ!」

 ……えっとぉ〜?

「あの、レオン様?」

 なんともわかりやすく咽せた男。
 むしろなぜ? 一体なにに? そもそも、これまたキャラじゃないほどに焦ってる様子が、手に取るようにわかる。