珍しく、レオンはあからさまにハッとした表情を見せた。

「これは……」

 言い訳の言葉を模索しているのだろうと予想がつくけど、そんな言葉は聞きたくない。むしろ言い訳などせず、普段のレオンらしくキッパリと真実だけを述べて欲しい。
 何度振り切ろうとしても、自分の意思に反して期待しようとしてしまう馬鹿げた自分の思考を、いっそのこと木っ端微塵に砕いてほしい。
 真綿で締め上げてじわじわ殺されるより、ギロチン台に乗せられた方が苦しみは一瞬だ。後生だから、どうか一息にカタをつけて欲しい。
 そんな風に思っていた時、レオンに掴まれている腕とは逆側が、ズシンと重くなった。
 何が起きたのかと見てみると、空いていた片腕にはじゃれつく子猫のように、マリーゴールドが抱きついていた。

「いっそのこと、三人一緒に行動すればよろしいのではないでしょうか?」

 えっ? って、思わず驚いてしまったら、そんな私の表情を見ておかしそうにコロコロと笑ってみせるマリーゴールドは本当に天使だ。可愛さが爆ぜている。

「リーチェ様はお忙しいのですよね? けれど私もバービリオン侯爵様も、リーチェ様とお話ししたいと思っているので、それでしたら一緒に回りませんか? 聞いた感じですと、このお店について現状詳しいのは侯爵様のようですし、説明を聞きながら見回る方が効率も良いかと思いますっ!」

 弾むように言い切ったマリーゴールドの顔が、どことなしかドヤ顔だ。それがまた可愛いと思えるから、やっぱり彼女は天使なのだと思う。