「……今日も、あの媚薬香水をつけていらっしゃるのですね」

 私と会う約束をしていなかったのに。そんな予定すらなかったというのに。
 そもそも私と会った時も、驚いていたほどだ。連絡してくれれば……という言葉が出た地点で、今日私と会うなどという予測は皆無だったはず。

 レオン自身から香るいつもの香りに加え、私があげたあの媚薬香水の香りが混ざり合う。
 もちろん昨日とは違う衣服に身を包み、公爵でありつつ帝国の騎士でもあるレオンは、例え戦がなかったのしても剣の腕がなまらないように毎朝のように体づくりと鍛錬を繰り返している。そんな彼がシャワーを浴びないわけがない。

 ……であれば、この香水の香りは今朝つけたものだ。
 間違いなくこれは、私を落とすためではない。けれど堅物な彼が誰彼構わず捕まえるために香水をふったとも想像し難い。


 ならばこれはーー運命の相手、マリーゴールドのためにつけたものになる。