レオンの手を払いのけようとするが、うまくいかない。きっとまた、彼の中でスイッチが入ったのだろう。案の定彼は掴んでいる私の腕を引っ張り、体を近づけた。

「私がリーチェと一緒にいたいのです。そう言えば理解してくださいますか?」

 耳元で囁かれる言葉の威力。思わず顔が赤らんでしまうのを、どうすれば止めることができるのだろうか。
 ーーそう思った矢先、私の赤らんだ顔から熱がさっと引いていくのを感じた。

「リーチェ? どうかし……」

 首を傾げるレオンの言葉を無視し、私は彼の胸ぐらをグッと掴んで、胸元に顔を近づけた。

「リ、リーチェ……」

 珍しく慌てた声を上げるレオンに対し、私は縮こまった心臓が静かに硬くなっていくのを感じていた。
 もう心臓の音すら聞こえない。締めつけすぎて、石のように硬く、小さくなった私の心臓は、本来の活動を拒否していた。

 もう、胸を躍らすのも、期待するのもやめよう。これではまるで、一人で社交ダンスを踊るようなものだ。社交ダンスは二人で対になって初めて踊れるもの。
 それを一人で試みている私は、なんとも滑稽で、そもそもダンスにもなっていない。
 これ以上は慙愧(ざんき)に堪えない。