名前の由来であるマリーゴールドの花は、朝日が昇るとともにその花を咲かせる。長い夜を終えレオンという朝日を受けて、彼女は溢れんばかりに美しく満開の時を見せているかのよう。

 一心にレオンに向かって花開くマリーゴールドに邪魔だてするなんて、気が引けてならないわ。私は彼女のように直情的に気持ちを向けることはできない。これは良心の問題でもあり、それが私ーーこの世界の創造主の道徳心でもある。

 何よりいつもなら私の言葉を否定しようと会話に割って入ってきそうなレオンが、今だけは沈黙を続けている。一切口を挟もうとしない彼の様子がまた、私の選択が間違ってないという証拠だわ……。
 そんな風に考えると、どんどん萎縮していく私の心臓は、更なる締め付けを感じて苦しみから悲鳴を上げた。

「……お二人はゆっくりとご歓談くださいませ。私はこの後に予定がありまして、この店の様子と錬金術師に挨拶をした後は、すぐに立ち去らなければなりませんので」

 彼らにお辞儀をし、隣を通り過ぎようとした私の腕を引いたのは、レオンだ。

「でしたら私が店内を案内し、錬金術師も紹介いたしましょう。彼なら今、奥で荷の整理をしていましたよ」
「いえ、本当に少し見回る程度で足を運んだので、わざわざレオン様のお時間をいただくほどではございません。せっかくですのでマリー様と一緒にゆっくりされてはいかがでしょうか?」

 さっきまでは無言を貫いていた人物が我に返ってしまったのだろうけど、わざわざ体裁のために私に気を使わなくてもいいのに。