「マリー様は昨夜の一件の被害者であり私と同じ不運を共有した、いわば運命共同体なので言ってしまいますが、実は私とレオン様は契約で結んだ関係なのです」
「契約で、ですか?」
「はい。話せば長くなるのですが、あのクズ……もとい、コーデリア公爵様が私にゲスい事を……いえ、私があの方の反感を買ってしまい、脅迫……ではなく、パーティに招待されたのですが、パーティに着くなりアイツ……じゃない、公爵様が無理矢理……といいますか、皇帝陛下に進言して私と婚姻を結ぼうとしていたので……」

 くそぅ、私の本能レベルでキールを拒絶しているせいか、つい本心が出てきて話しにくいったらない。
 昨日は緊急事態だったからついつい口汚い言葉をマリーゴールドの前で使ってしまったけれど、令嬢たるものそんな言葉吐いてはいけないし、目上の地位に当たる伯爵令嬢の前で、そんな言葉を使うわけにはいかない。

「……なるほど」

 そう思っていたのだけどーー。

「要約すると、リーチェ様があのクズ男にゲスい事をされ、挙句に脅迫により昨夜のパーティに参加された矢先にあのカス野郎が、嫌がらせのために無理矢理リーチェ様と婚姻を結ぼうとしていたところをバービリオン侯爵様が助けてくださった……という事でしょうか?」

 にーっこりと微笑む無邪気なマリーゴールドを見てると……あれ? 今毒吐いてたような気がするけど、気のせいよね? って、脳内で自己処理を始めそうになった。
 きっと後光を背景に天使が笑顔で口汚く罵ったとしたら、一瞬その下世話な言葉だって浄化の言葉じゃない? って思えてしまうような、そんな状況だ。

 ってか私、カス野郎なんてフレーズは使ってないと思うんだけど……。
 マリーゴールドってば、私の罵りに上乗せしたよね……?