「リーチェ! 大丈夫ですか⁉︎」

 皮肉だ。レオンの慌てた様子を見て、私の心は次第と落ち着きを取り戻す。
 奥歯をグッと噛んで笑顔を取り繕いながら、私は丁寧にお辞儀をする。

「これはこれは、レオン様。まさかレオン様も今日こちらにいらしてるとは思いもしませんでした」
「挨拶などいいのです。それよりも体調は大丈夫ですか? 顔色が悪いようですし、リーチェが今しがたフラついた様子が店内から見えましたが……?」
「心配してくださって、ありがとうございます。今日はあまりにも天気が良く、薄暗い馬車から太陽の下に出た時に、一瞬めまいがしてしまっただけです。一過性なものですので、ご心配には及びません」

 レオンが私をエスコートするかのように、手を取った。けれど私はその手をすぐに離してしまう。レオンが開け放ったショップの入り口から、マリーゴールドがこちらを見つめていたからだ。
 マリーゴールドのどこか申し訳なさそうな表情を見て、一気に居心地が悪くなる。

「……リーチェ?」
「それよりレオン様。今日はどうしてこちらに? しかも昨夜のご令嬢も一緒のようですが?」

 声がどんどんAI化していく。自分の声なのに、自分のものじゃないみたい。
 せめて責め立てている風には聞こえない様に笑顔を作り、レオンの肩越しにマリーゴールドに視線を向ける。