今日は忙しい。なぜならば、私の事業をさっさと拡大してメインキャラ達からも、マルコフからも逃れなければならないから。
 レオンは仕事のできる男だ。私が依頼していた錬金術師も見つけてくれ、既に購入済みの香水ショップで錬金を始めてくれているらしい。
 だから私はその錬金術師に会うついでにショップの下見もしておこうという魂胆だ。

 錬金術師を探すのはレオンに一任していた。私にはコネもなければ、金額交渉等もレオンがする方がいいに決まってるからだ。
 男爵令嬢の小娘が……と足元を見られないためにも、レオンが表立って探してくれた方がいいと考えたからだけど、ショップに関しては口を出させてもらった。

 土地は貴族が好みそうな品の良い高級買い物街。内装は派手にはせず、シンプル。
 けれど上品で洗練された見た目に。窓も大きく作り、店内に自然光が入り、かつ外からも覗きやすいというもの。

 馬車が止まった。その後すぐに、扉をノックする音が聞こえた後に扉が開いた。

「リーチェお嬢様、到着いたしました」

 従者の手を取り馬車から降りると、私が要望した通りのショップが目の前に立っていた。
 女性はもちろん、自分用に、もしくはプレゼントする女性用に男性が足を踏み入れることも想定した高雅な様子に、思わず私の胸が躍る。

 ……けれど、そんな気持ちでいられたのもほんの一瞬だった。私はすぐさま、奈落の底へと突き落とされたような気持ちに陥ることになる。