「ところで侯爵との婚姻はいつ結ぶつもりだ? 聞いたところによれば皇帝からの許可を得たコーデリア公爵との婚姻を、あの堅物侯爵の手によって跳ねのけたそうじゃないか」

 やっぱり情報が早い。もうその話を知ってるんだ。
 マルコフは再び愉快そうに笑い、従者が持ってきたシャンパンを本当に朝から飲み始めた。
 私の席にもシャンパングラスが置かれたが、注がれるのは拒否しておいた。私はこれからやる事がある。朝っぱらから飲んでるわけにはいかないのだ。

「パパ、何事も順序というものがあるとは思いませんか? 私とレオン様は結婚の前に婚約を先に結ぶ予定です。それに先日伝えたかと思いますが、物事は焦らずゆっくりと進めていくつもりです」
「なぜ焦らす? コーデリア公爵がわざわざ皇帝から得た婚姻許可証をわざわざ撥ね退けたということは、バービリオン侯爵にはその気があるという事だ。たとえ準備ができていなくとも、人は時に選択をしなければならない時がある。チャンスと掴むとはそういう事なのだぞ、リーチェ」
「ええ、それは十分に分かっています」

 私は食事もそこそこそに、席を立った。

「これからやる事がありますので、私は先に失礼いたします。パパは朝食を楽しんで下さいませ」

 ドレスの裾をつまみ、お辞儀をしてから部屋を立ち去る。マルコフがまだ何か言いたそうだったが、それを無視して立ち去った。