……いいや、マルコフの場合は良いように解釈しようとしているのではなく、そういう風に話を撒き散らし、自分にとって良い方向に持っていこうとするのだからタチが悪い。

 さらに言えば、実際にそうなるように手回しも抜かりないのだ。だから私は常に彼の言動を潰しにかからねばならない。
 人の口に戸は立てられない、なんてことわざが前世であったけど、まさにだ。どうせ私が訂正と否定を繰り返しても、私のいないところでもそういう言動をしているのだろうから暖簾に腕押しとはこの事だ。
 だからといって、無視して野放しにできないのも私の性分である。

「まぁまぁどちらでも結構ではないか。そんなもの小さな違いだ」
「小さい違いではございません。昨夜着ていた私のドレスをご覧になったでしょう? 胸元のレースが裂けていたのはコーデリア公爵様による所業です。嫁入り前、婚姻前である令嬢にする態度ではないと思いませんか?」

 もちろんマルコフはあの場にいなかったわけだから、どうやってドレスが裂けたのかまで知る由がない。けれど私は今朝あのドレスを持って、マルコフに事細かく説明をしておいた。

 昨日の事でレオンやキールから手紙が届くかもしれない。そもそもあの場には数多くの貴族が集まっていた。そこからの噂がマルコフの耳に届くまで、星の速さだ。
 そう思って先手を打ったつもりだったのだけど……相変わらずマルコフにとっては、真実よりも利益となりうる事実のみが重要なようだ。