「がっはっはっは」

 愉快そうに笑うマルコフの声が、朝食の場に響き渡る。鶏の鳴き声よりもやかましいと感じるのは私が寝不足だからではないはずだ。
 昨日は結局一睡もできなかった。家に帰って来たのがほぼ早朝だったからというのが理由でもあるが、それよりも私の脳内で反芻し続ける映像のせい。
 レオンとマリーゴールドが出会ってしまった。それも予想とは早い段階で。私の知るシチュエーションとは違った状態で。
 それなのに二人は、惹かれ合っていた。
 見つめ合う二人のあの光景が、どうしても頭から離れない。
 そんな私の負ともいえるループから引き剥がしてくれたのは、皮肉なことにマルコフの声だった。

「バービリオン侯爵とコーデリア公爵がお前を巡って決闘をするとは、いやはや我が娘ながら素晴らしいぞ! おいっ、今日は一番良いワインを持ってこい」

 いやいや、今何時だと思ってんの? 朝の七時よ? 徹夜明け状態な私はまだしも、マルコフにとっては朝でしょ。早朝からワインってどんな生活習慣したらそんなもの飲めるのだろうか。

「パパ、先ほども言いましたが、コーデリア公爵様に決闘を申し込んだのはレオン様ではなく私です。そして私の代わりにレオン様が決闘に出てくださるのです。決して私を巡って決闘が執り行われる訳ではありません」

 しかしマルコフもキールとは少し違った意味で、脳内お花畑だ。自分の良いように物事を解釈しようとする。