レオンはこの世界の男主人公。普段は冷徹で他人に対しては興味を示さない。
 けれど一度でも彼の懐に入った人間に関しては深い愛情を与え、心を許し続け、決して裏切らない。
 そして、レオンをそんな性格に設定してしまったのは私。だからこそ私には彼が考えてるだろう事が想像できる。
 きっと今、彼が悩み苦しんでいるであろうことが。

「……レオン様。彼女を一目見た時、どう思いましたか?」

 何か感じるものがありましたか? 自分の片割れとでも思うような、運命を感じましたか?
 レオンの瞳はどこか虚ろに見えた。けれど私の声を聞いて、この世界に戻ってきたかのように、瞳に正気が宿った気がした。
 そんな青い瞳に映る私は、どこか滑稽に見えた。

「リーチェ、何か言いましたか?」
「……今後は、挨拶の場以外で口づけするのを控えてくださいとお願いしたのです」
「嫌、でしたか?」

 その瞳に映る自分を見つめているのに耐えかねて、私はレオンから顔を逸らした。そのせいで彼が今、どういった顔をしてそんな風に言葉を紡いだのか確認できなかった。

「私たちは現在、仮初の間柄です。今後この関係がどうなるか分からないので、控えていただきたいと思ったまでです」
「今後どうなるか……」

 ボソリとつぶやいたレオンの声。レオンが何を考えているのか読み取れないようなその言い方に、私は顔を上げてレオンを見やった。
 けれどその時レオンは、顔を天へと向けていて、やっぱり私は彼がどういう表情をしているのかを見る事ができなかったーー。