「きゃっ!」

 突然のお姫様抱っこ。

「あっ、あの……⁉︎」
「好きにするといい。これ以上外にいてはリーチェの傷に触るから、俺達はここで失礼する」

 レオンは身を翻し、私を抱いたまま歩き出した。

「リーチェ、長らくお待たせしてしまいましたね」

 さっきまでの怒りの表情はどこへやら。レオンは再び私に敬語を使い、尖っていた瞳をほんのり丸く角を落とす。

「あの、おっ、おろして下さいません……よね?」

 恐る恐るそう言うと、レオンが珍しくにっこりと微笑みを向けた。

「はい、おろしません」

 笑顔とは裏腹に、言葉は私の意見を拒否した。

「あなたの足は傷だらけです。すぐに冷やさなかったせいで、頬もこんなに腫れているではありませんか」

 そう言って、レオンはすかさず私の腫れた頬にチュッとキスをした。抱っこされているせいで、レオンとの距離が近い。彼の美しい顔もすぐそばにある。そのせいでキスを避けそこねてしまった。