本当はレオンが戻ってくる前に、キールとの事を終わらせたかった。決闘と口には出したものの、レオンの名前を出せば、キールは再び決闘を避けたがると踏んだから。
 だからこのまま決闘を無しの方向に誘導しつつ、私に今後一切……ううん、少しの間でもいいから、私に関わってこないようにしたかった。

 ……でもレオンがこうして戻ってきたことで、その案は流れそうだ。表情こそ出ていないけど、私には分かる。
 レオンはキールと決闘する気満々だ。

「不快なのはお互い様だろう。つべこべ言ってないで、リーチェの決闘を受けるのかどうなのか、はっきりしないか? 俺達は公爵と違い、暇じゃないんのでな」
「はぁ?」

 キールの目つきに鋭さが付け足された。けれどレオンはそんなキールに怯む様子など微塵もない。むしろ挑みかかるようなレオンの声色の方が、キールを圧倒しているように感じるほどだ。

「事実だろう? 令嬢を追っかけて力づくで落とそうとするしか脳がないのだからな」
「お前! 誰に向かってそんな口を……!」
「誰に? 決まってるだろう、目の前にいるコーデリア公爵に言っている」

 私と関わる時のレオンの表情と、今ここで凄んでいる表情。他者から見れば、さほどの違いは感じられないかもしれない。
 けれど私にはよく見える。レオンの表情の細かな違いが。
 冷たく放つような青い炎。赤い炎よりも青い炎の方が温度が高いのだと、前世の学校で習ったけど、まさにその通りだと思った。
 高温の熱が明らかにキールを圧している。その熱は平静時には感じられない、一瞬で相手を焦がし尽くすような勢いがある。