「そっちが代理人を立てるのに、こちらが代理人を立てられない理由はないだろ」

 どこまでも男気とは無縁な男だ。
 ……いや、それを言うのなら私もかな。レオンに借りを作らないためにも、決闘を反故にするよう言っておきながら、こうして彼を頼ろうとしている。
 結局私もこいつと同じーーいや、同じ訳はない。
 少なくとも私はこの男のようなクズではない。

「令嬢に決闘を申し込まれたのですよ?」
「ああ、前代未聞だな」

 いや、そういう話をしているわけじゃないから。

「代理を立てるにしても、バービリオン卿はダメだ。それでは力に差がありすぎる」

 ああ、そこは流石に認めるんだ。そこまでバカではなかったか。

「……つべこべ言ってないで、さっさと受諾したらどうだ?」

 その声にハッとして、私は後ろを振り返る。すると私の元に向かって歩いてくるキールの姿があった。
 マリーゴールドは無事安全な場所に送り届けてくれたのか? レオンの事だから、きちんと対応してくれたのだろうと、ほっと胸を撫で下ろす。
 もう少し時間がかかると思っていたのに、意外と戻りが早かったことに驚きつつ、話を聞かれていたことに焦りを覚える。
 けれど何よりも、レオンがマリーゴールドを置いてすぐに戻ってきてくれたことに、胸が甘く疼いていた。

 ……けれどそれと同時に、そんな自分の感情に嫌気がさした。