ここはキールの屋敷で、キールの従者に騎士達、そして公爵家の息がかかった貴族達が集まるパーティ。たとえ普段のキールの素行の悪さを知っていても、それを否定する人はいないってわけだ。
 私はあたりを見渡して、この状況を理解した。

「そこまでおっしゃるのであれば、私はレオン様が公爵様に申し込んだ決闘を止めはいたしません」

 こっちだって少なからず手札はある。単なる弱い立場ではないのだと、こいつは再認識する必要があるみたいね。

「騎士に二言はないだろう。一度取り消す方向で既決したのだからそれは受け入れ難いぞ」
「そうですね。ですからーー」

 さっきレオンが投げた手袋。私はそれを拾い上げて、キールを引っ叩く気持ちで彼の頬に目がけて投げた。

「コーデリア公爵様に《《私が》》決闘を申し込みます」

「バカめ。女のお前に何ができる? 剣など一度も手にしたこともないくせに」
「ええ。ですから条件を設け、私は代理人を立てます」

 キールは心底おかしそうにお腹を抱えて笑い出す。

「はっ、なんだ。やたらと威勢がいいと思ったが、結局は代理人を立てるのか」
「公爵様は私と本気で剣を交えるおつもりだったのですか? 流石にそれは結果が見えていると思うのですが?」

 私は剣を持ったこともなければ、魔法の才もないモブ令嬢。普通に立ち向かえば、負けは目に見えている。