「ええ、少し用事がありまして。まさかこのようなところで、公爵ともあろう立場の方が女性を辱めているとは思いませんでしたが」

 レオンの言葉に、キールは敵意を露わにする。
 表情からは感情が読み取りにくいレオンに対し、キールはとても分かりやすい。

「失礼な言い方をしないでもらいたいものだな。女性に無理やりどうこうするほど、俺は女に飢えちゃいないんでね」

 おおーい! 思いっきり無理やりでしたけど?
 私は何度も拒んでいたと思うんですが?
 きっとキールの思考回路では、嫌よ嫌よも好きのうち。って思ってるんだろうけど。

 ……って、改めて思うとなんだそれ! 不愉快極まりないなっ!

「そうか、それは失礼。女性が悲痛な声を発していたのは気のせいで、今もそちらのご令嬢は暗い顔をしているように見えるのも、私の勘違いだったようだ」
「勘違いでは――っ!」

 口を挟もうとしたのに、キールは私を背中に隠し、腕をグイッと掴んだ。力いっぱい掴まれたその痛みに、最後まで声を発することができなかった。

「女性嫌いで有名なレオン侯爵は知らないだろうな。これはプレイというものだ」

 ――は?

 思わず開いた口が塞がらない。