「だから、ちがっ!」

 そしてすかさずアゴクイと、私の手を抑えつけて封じるその手。さすが女たらし、手慣れている。
 
初心(うぶ)な田舎令嬢というのも、たまにはいいものだな」

 たまには……なんて言ってる地点で、本気じゃない。
 完全に火遊び相手としてしか見てないじゃん。田舎令嬢ってだけで相手を舐めくさっている。
 ううん、コイツは女性というものを見下しているんだと思う。
 だからこんなにとっかえひっかえするんだ。
 女たらしという設定以外、考えたことはなかったけど今のキールを見てるとそう思う。

 私が細かく指定しなかった裏設定は、このマンガの世界なりの補正なのかもしれない。
 そんなことを考えていると、キールはさらにこう言った。

「安心しろ。キスくらいで孕んだりはしない。……ただ、キスだけで済むかどうかは知らんがな」

 極めつけのクズいセリフ。
 私の想像しうる限りの容姿を総動員した男だけど、反吐がでるほど嫌いなクズ男でもある。