「侯爵様、ブレないですね」

 どこまでも香水の効果を確認しないと気が済まないの?

「そういうリーチェは、さっきから私の名前をお忘れのようですね?」

 そこについても、本当にブレないな。
 私はコホンと喉を整えてから、改めて言葉を紡ぐ。

「レオン様、本当にその、私の事が好きなのですか?」
「リーチェこそ、まだ疑っているのですか?」

 いや、疑いたくもなるでしょうよ。
 私とレオンが出会って間もない上、出会いもなかなか最悪だったし(クズ男キールのせいで)、どこに惚れられる要素があるというのか。

「疑い……というよりも、疑問でしょうか。私のどこに魅力を感じてくださってるのかが、分からないのです」
「どこって、全部ですよ」
「全部?」

 こんな、事あるごとに鼻血垂らす女なのに?

「一目惚れだったのかもしれません」

 ひっ、一目惚れ⁉︎ 嘘でしょ!
 驚きの事実に、あんぐりと、バカみたいに口を開けてしまった。
 いや、待て待て。だったのかもって言い方したよね? 濁したって事は、確信がないって事だ。
 確信があるにしろないにしろ、一目惚れって言ったら……。