いやいやいやいやいや!
 お前の前で黙り込んだらダメなのか?
 黙り込んだ令嬢全員にキスのプレゼントをするのか?

 思わずそんな言葉を吐き出しそうになって、必死にそれを飲み込んだ。
 代わりに別の言葉を考え巡らせ、口からポロッとこぼす。

「突然のことに、驚いていたのです」
「ふっ、皆そう言うんだ」

 言い訳だと思ってる……脳内お花畑がすぎる。

「どうせ俺のことを避けていたのも、俺の気を惹くためだったのだろ?」

 マジでこの男の脳みそは花だ。
 今まで会ったこともないのに、気を惹くためにキールの参加する夜会を避けるっておかしくない?
 令嬢の行動は、全て俺の気を惹くためにやっていること。
 なんて思ってるんだよね。ナルシストというか、カン違い野郎もいいところだ。

 ただ、キールは本当にモテる。
 何度も言うようにその美貌と肩書き。
 そんな男からグイグイ迫られれば、普通の令嬢ならダルマが転ぶよりも簡単にコロンといっちゃうだろう。
 ……って、私がそう設定したんですけど。

「ほら、また無言だ。それは無言の肯定ととらえていいんだな?」

 しまった!
 馬鹿みたいに都合よく解釈していくキールの脳内お花畑に、思わず唖然としてしまった。
 それが結果としてキールに隙を与えるキッカケとなってしまった。