扇と共に持ってきていた小さなハンドバッグ。その中に小さな遮光瓶ーーペパーミントを忍ばせていた。
 その蓋を開けて、それを手のひらに数滴落とそうと思っていた矢先だった。

「私にさせてもらえませんか?」

 レオンからの申し出に、私の手はピタリと止まる。

「私のせいでリーチェが瘤をこさえたのです。ですから少しでも罪滅ぼしをさせて下さい」

 そう言って、レオンは私の肩を抱き、ポスンと私はレオンの膝の上で横になった。

 ……ひっ、ひざ枕?
 正気なの……?

 推しの膝は筋肉質なせいかとても硬くて、寝心地が悪い。にも関わらず、私は天へと昇れてしまいそうなほどの幸福感。
 そしてもちろん、羞恥心もザバーンと荒れ狂う波のように押し寄せてきた。

「レッ、レオン様⁉︎」

 まさかの状況に、脳天には衝撃が走る。まるで鈍器でドゴォ! とクリティカルヒットを食わされた気分だ。
 しかも横になっているせいで、鼻血が出てしまったら一発でレオンの衣類を汚す。
 しかも膝の上。
 そりゃダメでしょ。

「落ち着いて下さい。興奮しては余計に瘤が痛みますよ」

 誰のせいだと思っているのか。
 私とは打って変わって、彼は至って冷静だ。
 私の事を好きだとか言っておきながら、こんな状況を冷静でいれられるレオンは、本当に私の事が好きなのだろうかと疑問でしかない。