レオンとは公式に付き合っているけれど、そこに本物の愛はない。少なくともレオンにはない。
 それなのに少しずつ違和感を覚えてしまうこの状況。

 レオンの性格を知っているはずである作者の私だけど、彼の性格は私の作り上げたものとは少し異なる。
 媚薬香水についてもそう。
 彼はそんなものに興味を示すようなタイプでもない。
 もちろん私という人間が介入した事によって、物語は少しずつ変化をせざるおえなくなったのは確かだけど。

「リーチェは私の事を、そんなふうに見ていたのですね」

 私の頰に触れていたレオンの手が、言葉とともにスッと離れた。

「そっ、そんな事はありません」

 思わずガシッとレオンの手を掴み取ってしまった。
 そんな自分の行動に驚いて手を離そうとしたら、今度は逆にレオンから握り返されてしまう。

「これは私の本心です。言葉に裏の意味などありません。どうか素直に受け取って下さい」

 ……グイグイと詰め寄られる感じに、デジャヴ。
 そういえば私、こんなシーン描いたな。
 もちろんその時レオンが手を握った相手は私ではなく、マリーゴールドのだけど。

「私はリーチェ、あなたの事が好きです」

 ーーゴッ!

「……リーチェ⁉︎ 大丈夫ですか!」

 思わず顔を仰け反ると、後頭部が馬車の壁に直撃した。