「もちろん、リーチェ嬢のことも把握済みだ」

 把握とか言っちゃってる。
 普通に考えたら怖いし、気持ち悪い話なのに、ビジュアルが良すぎて「ああそうですか」とか思いそうになってる自分も怖い。
 というか、自分が作ったキャラなのに、自作のキャラにのまれそうになってる自分もヤバいな。

 この状況とキールの発言に、脳内で突っ込みまくってたせいで、今私の前にはキールが壁ドンをしながらアゴクイをしてるって事実をすっかり忘れていた。
 はっと我に返った時、キールの顔がどんどん私に向かって近づいてきていた時だった。

「なっ! にを、しようとなさってるのでしょうか……⁉」

 拳一つ分の距離にキールの唇がある。私はそれを両手で押しのけた。
 これ、絶対キスしようとしてたでしょ!
 あっぶなかったぁ! 油断も隙も無いなっ!

 だけど私の手を掴み、封鎖したキールの口が再び開かれた。
 しかも眉間にシワを寄せながら。

「キスをせがんできたのは、そちらではないか」

 はいぃ?

「私がいつ、キスをせがんだと言うのでしょう?」
「俺の顔をじっと見つめながら、黙っていただろう?」

 お前の要求に答えてあげているだけだぞ、とでも言いたげに、キールは目を細めながら首をひねる。