「今夜のパーティ以降、二人は話題の中心人物になるでしょうな。この二人がこんなに愛し合っていると。誰も二人の間には割って入る隙などないというように」

 ああ……あれほど釘を刺しておいたのに、ぬかに釘とはまさにこの事だ。
 めちゃくちゃ婚約をプッシュしてくる。このまま放置すれば、やがては結婚話を言い出すに違いない。
 それはさすがに困るーーそう思って、口を開いた瞬間だった。

「……ええ、そのつもりです」

 レオンは優しい視線を私に向けた。
 氷と同じ色をした瞳には、春の訪れを感じさせる色が映し出されているように見えて、思わず首を捻ってしまった。
 けれどそんな私の様子を見て、レオンは笑みを零した。

「誰も私とリーチェの間に割って入らせるつもりなど、ありませんので」

 赤く柔らかな私の髪をひと房掴み、レオンはそこにキスをする。キスをしながらも、視線だけは私をしっかりと見据えている。

 ーー今一瞬、私の視界に天使が見えた気がする。とうとう天国からお迎えが来たのだろうか。
 私はハッとして鼻に手を当てた。どうやら鼻血は出ていないらしい。イメトレの成果は思った以上に現れてるのかもしれないな、なんて思った矢先。

「……私の前では、あなたの愛らしい顔を隠さないでいただきたい」