「文ちゃん、バスが来たみたいだよ、行こうかぁ」
あ……ほんとだ。
バスが止まったのをみて、改めてここから旅立つんだって実感する。
一気に寂しさが押し寄せてきて、私はおばあちゃんとおじいちゃんを見た。
「文ちゃん、元気にいっておいで!」
「体には気をつけるんだよぉ」
おばあちゃん、おじいちゃん……。
「いいか、少しでも危ないやつには近づくなよ! あんまり他人のこと信用するんじゃないぞ、特に男には気をつけろ……! れ、恋愛も、まだ早いからな! 絶対にダメだ!」
綾くん……。
「うん……行ってきます!」
私……才咲学園に行って、きっと夢を叶えてみせるから。
キャリーケースの持ち手を握りしめて、私は歩き出した。
「みんな、元気でね! また夏休みに!」
みんなに手を振って、バスに乗る。
バスの中から、手を振ってくれるみんなの姿が見えなくなって、こらえていた涙がぽろっと溢れた。
泣いちゃダメ……ひとりで頑張るって、決めたんだ。
私は才咲学園でたくさんのことを学んで……”黄泉まなぶ先生”みたいな、小説家になるんだ……!