「長期休みは戻ってくるよ! 学校から電話もするね!」

「ふふっ、楽しみに待ってるよ〜」



キャリーケースを持とうとした時、玄関の扉が開く音がした。



「文、もうバス来るぞ」



現れたのは、隣の家に住んでいる従兄弟の綾(りょう)くん。

綾くんは昔からとても優しくて、同級生なのにすっごく大人びていて、その上頼もしくて、私にとって本当のお兄ちゃんみたいな存在だ。

勉強も運動もなんでもできて、かっこよくて女の子にモテモテで……自慢のお兄ちゃん!



「うん! 今から行く!」

「……」

「綾くん?」



なぜか私を見たまま、じっと動かなくなった綾くん。

そ、そんなに見つめて、どうしたんだろう……?



「……いいか、文」

「ど、どうしたの?」

「間違っても……コンタクトとかにするんじゃねーぞ」

「え? どうして?」