目を開けると、もう小野さんの姿はどこにもなかった。


ただ、小野さんが乗っていた赤い自転車だけを残して。


小野さんの言っていた「もうすぐ」がやってきただけのことだ。


何も悲しむことはない。寂しがる必要もない。


僕は、鳥居をくぐって、振り返り、一礼した。


チリンッ。


小野さんの赤い自転車のベルを鳴らした。


乗ってきた2台の自転車はここに置いていくことにした。


小野さんにも、そして僕にももう、必要ない。