その日、僕はパーティーを開かなかった。


毎晩のように飲んでいた酒も飲まなかった。


部屋のリビングには、線香の匂いがして、しかし、その線香は8月6日の犠牲者をしのぶものであって、レイのものではない。


僕は、自分の部屋に戻って、線香に火をつけた。これはレイに対する鎮魂を意味する。


あの冬に出会った男のことを僕は今、思い出す。


フィツ・ジェラルドの小説「グレート・ギャツビー」に出てくる、ギャツビーのような男だった。


とても、グレートな、男だった。