「レイには友達と呼べる人はいませんでした。でも、たった一人、親友と呼べる人がいたと。それがあなただったんです」


「でも、僕はあの日以来、レイとは連絡を絶っていました。それがどうしてここに?」


「あなたと別れた後も、レイはあなたのパーティーに潜っていたんです。あなたが日本酒造りの町に住んでいることももちろん知っていました。あなたが地元に帰ってきてびっくりした話に、小学校や駅ができてたって話があったでしょう? 歩いてすぐのところにドラッグストアがあることも。あとは、人に聞けばここにたどり着けました」


「まったく、個人情報というのは脆弱ですね」


僕はそんな話なんかもう、どうでもよかった。


「レイはあなたが一度、自ら命を絶とうとしたという話を聞いて、心配していました。そして、もし自分が何かの拍子で死んでしまった時、あなたには強く生きてほしいということを伝えてくれと。そう言われて、私はあなたに会いに来たんです」


僕は自分で自分が恥ずかしくなった。


「強く生きてください。どんなにつらいことがあっても。あなたにはそれをしなければいけない義務があります。死んでいった人にできることがあるとするなら、忘れないでいることと、その人の想いを汲んで、強く生きていくってことだけだと思うので」


「わかりました」と僕は力強く言った。


「生きていきます。レイの分まで」