レイコさんはレイのそんな事情を知りながらも、レイと一緒になりたいと思っていた。


しかし、レイは満足に働けない自分に劣等感を抱いていて、唯一自分にできる小説の世界で生きることに一生懸命だった。


パーティーをやめたのも、僕と決別したのも、本気で小説家を目指すためだった。


「それでも、結構いい線まではいっていたんですよ。私のツテに、出版社で編集をしている人がいたんですけど、その人にレイの書いた小説を見せたら、結構好感触で。そのことがレイには生き甲斐になったようで」


レイは小説を書くことにかなりの時間と命を削ったらしい。


朝から晩まで毎日のように机に向かい、通院日も、待合室で膝の上にタブレット端末を開いて小説を書きまくったらしい。


そして、その道半ばというところで不整脈による心不全で亡くなったのだと。


7月のことだった。