そんなカフェに一つだけ足りないものがあった。客だ。 店を開いても、誰も来ない。ドアが開く時のあの、「ピンポーン」という音を辛抱強く待つ日々。 ベルが鳴っても、席にも着かず帰っていく。 そんな客とも言えない人たちを何度も見送った。 これで友達でもいれば、来てくれるのだろうが、あいにく僕には友達がいなかった。