「彼女は会いたくないって言ってます」


それだけ聞こえて、切れた。


きっと僕の顔はこのカメラで見えている。あの男は本田さんの彼氏か何かで、今日僕と会ったことなんて話してないのだろう。


僕は本田さんのマンションを出て、また街道でタクシーを拾った。


「すみません、ラジオをつけてもらえますか?」


タクシーの運転手にラジオをつけてもらうと、また音楽が流れてきた。


しかし、その音楽はロックとは程遠い煌びやかな綺麗な音楽で、横浜の遊園地がどうの、カーニバルがどうのと歌っていた。


「ひどい一日だった」


僕は改めてつぶやいた。まるで終末だ。


しかし、同時に、ああどうして。


こんな日を待ち焦がれていた気がする。