「オノマトペっていうのはね、擬音? 擬声? みたいな。ほら、カラスなら、カーカー、ビールなら、グビグビみたいなこと」 「なるほどね」僕はブレーキをかけた。 「別に今は思いつかないや」 小野さんもブレーキをかけた。信号待ち、右のかかとを搔いている。 「蚊にでも刺された?」 「みたいね。去年の夏は少なかったのにね、蚊」 そういえば、そうだった気がする。